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タイセイ飼料株式会社

獣医/肢蹄病の原因と予防(2)- 肢(あし)の病気について

 先月のコラムに引き続き『肢の病気』について解説していきたいと思います。

––– 蹄冠の腫脹 –––
 『蹄冠(ていかん)』というのは下図に示す蹄上部の範囲を指し、『腫脹(しゅちょう)』というのは炎症が生じて赤く腫れたり、熱感を持つ事を意味しています。

 蹄冠の腫脹には大きく分けて以下のような3つの要因が存在します。

 1.感染症(フレグモーネ)
 2.ルーメンアシドーシス
 3.打撲

獣医/肢蹄病の原因と予防(2)- 肢(あし)の病気について

 1つ目の要因である感染症に関しては『フレグモーネ(蜂窩織炎)』が原因である事がほとんどです。フレグモーネは傷から細菌が侵入し、皮下に蜂の巣状の微小膿瘍が形成される病気です。早期の抗生物質治療でのみ治癒可能で、発症から時間が経ってしまうと難治性となります。今後、コラムに記載予定のDD(趾皮膚炎)や蹄底潰瘍などにも関係しますが、フレグモーネかな?と感じたら獣医師に診療依頼する事をお勧めします。

獣医/肢蹄病の原因と予防(2)- 肢(あし)の病気について

 2つ目の要因である『ルーメンアシドーシス』については既に皆さんご存知の事も多いと思いますので、今月は触りのみ記載します。ルーメンアシドーシス(第一胃内の酸性化)は、デンプンなどの炭水化物がルーメンで発酵する際に作られる『酸』が原因です。Streptococcus bovisと呼ばれる乳酸菌が生成する乳酸がルーメン内を酸性化(=pH低下)させる主要な原因と言われています。ルーメン内のpHが低下すると様々な微生物が死滅し、死滅した微生物内から毒素が漏れ出ます。この毒素が血液に吸収されると全身をめぐり、蹄冠にて炎症を起こし腫脹が生じます。高泌乳を維持するため濃厚飼料が多給されがちな現代の搾乳牛においては宿敵とも言える病態ですが、各農場によりルーメンアシドーシスの要因は異なります。飼料設計上、問題がなかったとしてもルーメンアシドーシスになる事例も散見されますが、長文となりますので別の機会にお伝えしたいと思います。

 3つ目の要因である『打撲』については、飼養環境の影響を受けます。以下のような環境では打撲が増える傾向にあります。

 ・過密
 ・給餌飼料不足/餌押し不足(=闘争を生む)
 ・ストールサイズと牛体サイズが合わない
 ・牛の安楽性を妨げるスタンチョンの構造/ブリスケットボードの構造
 ・突き出しスペースの不足
 ・滑りやすい通路
 
 打撲に関しては牛群編成のマネージメントや飼養環境の調整が必要となります。試行錯誤しながら各農場で最良のプランを見つけていきましょう。

 さて、蹄冠の腫脹を呈する要因を3つ挙げましたが、各農場で課題となっている要因は様々です。季節性のある場合もありますが、もし農場内で散見される場合には、上述した内容と関連性がないか探ってみてください。

(文責:牧野 康太郎)