トピックス

北海道十勝地方における飼料の専門会社。安全、安心な飼料ご提供を第一に、畜産家の皆様や消費者の皆様のご要望にお応えします。

  1. home

会社案内

タイセイ飼料株式会社

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(5)- 蹄の病気について

 先月はDDの概論を掲載しました。今月はもう少しDDのイメージ像を掘り下げていきたいと思います。

––– DD(趾皮膚炎)はどこで発症し、なぜ痛みを生じるのか –––
 DDは皮膚の表面(表皮)に見られるため、比較的発見しやすい疾病です。では、なぜ表皮に見られるだけのDDによって足がつけないほどの痛みを生むのでしょうか?表皮の深層はどの程度深くまで病変部位となっているのでしょうか?
 
 それを紐解くためには、まず、蹄の解剖から話を始めます。蹄底から副蹄までを縦断した模式図が下図になります。

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(5)- 蹄の病気について

 上図には今後のため多くの器官を記載していますが、今月のコラムでは『緑の枠内』のみを注目してください。つまり、表皮/真皮/皮下です。

 皮膚にTreponemaが感染しDDを発症しますが、その病態により、健康〜軽度〜重度の6段階に分けられます。

 ・M0:DDが無い状態(=正常な皮膚)
 ・M1:DDがあり直径2cm未満の状態(DDの発症初期)
     →痛みを伴わないとされるが、痛みを伴う事例もあり
 ・M2:DDがあり直径2cm以上の状態
     →激しい痛みを伴う
 ・M3:DDの治癒過程で痛みがない時期(休止期)
 ・M4:DDの治癒過程で痛みがない時期(休止期)
     →M3と違うのは皮膚が肥厚/角化している
 ・M4.1:M4の上にM1病変ができた状態(=再発)

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(5)- 蹄の病気について

 上図のMスコアはDDのステージを示し、矢印で示したようなルートでDDが発症 ⇄ 治癒を変遷することになります。なお、青枠 ⇄ 赤枠は以下の内容で分けられています。

 ・青枠 = 痛みを伴わないステージ:M0、M1、M3、M4
 ・赤枠 = 痛みを伴うステージ:(M1)、M2、M4.1

 M1に関しては痛みを伴わないという報告もあるのですが、痛みを伴う事例もあるため赤・青どちらの枠でも囲っています。また、M3、M4は『休止期』と呼ばれる痛みが無い時期で、治療や蹄浴の結果、黒 or 白に変色している時期をイメージしてもらえれば良いかと思います。M3、M4に関しては治癒する事もあれば、再発する事もあるので、経過次第では追加治療の判断が求められます(治療して足が痛くなくなっても安心はできない)。

 さて、上述したMスコアを見るとDDの『大きさ』が評価軸として定められています。では、DDをMスコア別に見た場合、どの程度皮膚は肥厚するのでしょうか(=厚くなる)?

 過去の報告を見るとMスコアが上がるにつれて、表皮が肥厚するという傾向が見て取れます(下図)。

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(5)- 蹄の病気について

 表皮が肥厚するというのは感染/炎症がある(or あった)という事です。DD原因菌の一つであるTreponemaは表皮のみならず、真皮や皮下にも炎症起こし血流障害を起こします。その結果、表皮より深層にまで強い痛みを起こしてしまうという事なのです(=見えている部分だけが病変部位ではない)。
 
 多くの場合、DDの治療には病変部位に対して抗菌物質/角質除去剤/抗生物質が塗布されます(局所の治療)。しかし、稀に抗生物質の注射を必要とする事例があります(全身投与)。これはDDに起因して表皮より深部の感染が考えられる場合に行う治療です。そのため、もし、局所治療を行なっても痛みが治らない場合には、抗生物質を注射するのも一手だと言えます。

(文責:牧野 康太郎)

― 参考資料―
(1) Local and Systemic Inflammation in Finnish Dairy Cows with Digital Dermatitis
(2) Digital Dermatitis: A Histopathological Evaluation and Some New Aspects in the Pathogenesis of a Multifactorial Disease