酪農コラム/視察などでよく質問される事について(3)
コラム

みなさんこんにちは。
今月のテーマは『離乳前後の下痢・発育停滞』についてです。
1年ほど前のコラム『哺乳プランの策定』の回で離乳について少し触れさせて頂きましたが、今回は離乳期に絞って書かせて頂きます。
前回の中では、生後1ヶ月齢まではミルクからのエネルギー主体で増体させること。1ヶ月齢過ぎからはスターターを消化吸収できるようになるので離乳に照準を合わせた哺乳プランが重要と書かせて頂きました。
カーフゲートに視察に来られた哺乳担当者からは「離乳前後にスターターを制限しないと下痢をしてしまう」や「離乳後、下痢や発育停滞を起こして肺炎・コクシジウム症・とくふくが増加してしまう」といったことを頻繫に聞きます。
両方について推察できる事は、体を維持・増体させていくためのスターター摂取量を十分に処理できるルーメンになっていないまま離乳期を迎えてしまっていると考えられます。
私は哺乳期から離乳後までの仔牛はスターターを飽食させて管理しなければ、満足のいく仔牛にならないと思っています。離乳が近づくにつれて下痢が増加してしまうのは、スターター摂取量に対しルーメンが成熟していない証拠で、この原因としては①過度な哺乳量による減乳開始時期までのスターターの馴致・摂取不足と②ルーメンの成熟度に見合わない哺乳プラン(減乳開始時期や減乳量)です。
① 過度な哺乳量とはミルク8ℓ以上、粉ミルクとして1㎏以上(冬期期間除く)を減乳開始時期直前まで仔牛に給与するという意味合いで、大半の仔牛は1ヶ月齢過ぎまでミルクからのエネルギーで充足してしまいスターターを摂取しなくても健康維持、増体が可能です。
群飼であれば他の牛につられて食べることもありますが、個別ハッチ等では全く食べない仔牛が多いと思います。1ヶ月齢未満の仔牛はスターターからのエネルギーは無視してミルクからのエネルギー主体で増体させるべきですが、スターターを食べる習慣やルーメンへの刺激は早い時期から少しずつ始めることが重要です。したがって過度な哺乳量はスムーズに離乳期を進める上でマイナスでしかありません。
② ルーメンの成熟度に見合わない哺乳プランとは、設定した離乳日齢ありきで急激な減乳を行い、結果ルーメン成熟度に対して過度にスターター摂取量が増加してしまい下痢や発育停滞を起こしてしまう事です。
このような場合はピーク哺乳量の引き下げ、減乳量を小さくする、減乳開始時期を遅らせる等が必要です。一般的に3日連続700g摂取や1日摂取量が1㎏超えたら離乳可能といわれていますが、この量ですぐに離乳してしまうと、まだ離乳後に増体できるルーメンになっていません。私の感覚ですが、最低でもスターターの1日摂取量が2㎏を超えてから離乳しなければ離乳後の発育停滞を防ぐのは難しいと思います。下痢や発育停滞による免疫力の低下を最小限に抑えることが肺炎・コクシジウム症・とくふく等の発生を防ぐ対策になります。
離乳は牛のライフサイクルの中で出産と並ぶ一大イベントです。
三つ子の魂百までといわれる通り、出生から離乳後にあたる幼齢期の管理が将来成牛になってからの乳量等に及ぼす影響は大きいです。
今回のコラムが再度、仔牛の飼養管理について考えるきっかけになっていただけますと幸いです。