獣医/機能性飼料素材 (8)
コラム
––– 消化酵素あれこれ –––
消化酵素製剤は非常に多くの種類があり、消化酵素を何種類か混ぜた製剤も決して珍しくありません。基本的に一つの消化酵素は一つの物質しか消化できないので、一つ製剤で多くの栄養素の消化に対応しようとすると、複数種類の酵素を使うことが必要です。
以下では、消化できる物質(栄養素)別にいくつか具体的に消化酵素を挙げてみたいと思います。
【炭水化物:繊維・デンプン】
植物繊維であるセルロースを分解してブドウ糖に変換する
キシラン(セルロースと同じく植物繊維の一種であるヘミセルロースの主成分)を分解する
セルロースやヘミセルロースと共に植物細胞壁を構成する成分であるペクチンを分解する
デンプンを分解してグルコースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、およびオリゴ糖などに分解する
【タンパク質】
タンパク質を分解する加水分解酵素の総称。タンパク質は分解されるとペプチドやアミノ酸になり、ウシなどの反芻動物では第一胃内微生物によってさらにアンモニアにまで分解される
ヒトやウシの生体にも元々存在する消化酵素。第四胃に分泌されるペプシノーゲンが胃酸に晒されることで形が変わり、活性型(実際にタンパク質の消化作用を示す)のペプシンになる
哺乳子牛がミルクを飲んだ際にミルクを固める作用(カード形成)を示す消化酵素の総称(主成分は「キモシン」)。消化酵素製剤として商品化されているものはない (※) が、工業的にチーズ生産する際に利用されている
(※ 2024年3月時点)
【脂肪】
ペプシンと同様、ヒトやウシの生体にも元々存在する消化酵素。その多くは膵液から分泌される
––– 消化酵素_まとめ –––
消化酵素製剤は非常に多くの種類があり、中に入っている消化酵素の組み合わせも多岐にわたります。消化酵素は科学的にその効果が明確に分かっているものばかりですので、食べた餌に対して消化酵素製剤が効いていないことはほぼ無いとも言えます。ただし「生体の状態が目に見えて変化して大きな効果を実感する」というケースも少ないかも知れません。特定の疾病に対して治療効果があると言われているもの以外では、やはり継続使用することが重要です。継続的に利用した結果として餌の利用性が上がり、
• 乳量が少しずつ伸びてきた
• 子牛が健康で治療が少なくなった、発育が良くなった
• 肥育の枝肉重量が増加した
などの効果が見えてきます。
消化性の悪い刈り遅れの粗飼料を何とか使いたい、毎日与えている餌の利用効率をもう少し上げていきたい、という様なケースでは一度試してみてはいかがでしょうか?